所変わり、ロンドン郊外。
そこには元は『六王権』軍の死者や死徒、そして『マモン』であった物が今や有機物、無機物の残骸となって無数に転がり、そこには足踏み場も文字通り存在しない。
無論行ったのはギルガメッシュ、ランスロットの二人だ。
「しかし、あいつら何者だったんだ?」
「わからん・・・敵でない事は確かだが・・・」
危機を脱したロンドン防衛部隊の兵士は口々にそのような事を囁き合う。
その存在を訝しがりながらも、助かったと言う実感を肌で感じ、安堵に表情を緩ませていた。
だが、そこへ空気を全く読まない声が響く。
「しかし残念だったな。『六王権』軍が此処まで来れば私の魔術で目にものを見せてやれたと言うのに」
「なんのなんの、お前よりも先にこの私の力で『六王権』軍を全滅させてやったわ」
そんなことを言い合いながら姿を現したのは協会所属の魔術師達。
口々にそんな事を言いながら、肩で風を切り味方である国連軍の兵士やフリーランス魔術師部隊を押しのけてやってきた。
「まだ反撃の準備が整わないのか?これだから屑共は困る」
「全くだ。これでは『六王権』軍を逃がしてしまうではないか」
嫌味ったらしく罵声を浴びせるが、つい先ほどまで『六王権』軍を見るや真っ先に持ち場を離れ逃げ出したのは彼らだった。
無論、協会にも逃げる事無く勇敢に戦った部隊は数多くあるが、良い印象よりも悪い印象の方が強いのは人の性と言うもの。
しかもそれに拍車をかけたのは逃げ出した部隊、実は軒並みが魔術師の間でも格のある家の後継者、早い話御曹司達が部隊員の大半を占めていたという事。
それに加えて彼らはやはりと言うべきか協会上層部より精鋭であるとのお墨付きを受けてここにやって来た。
それなのにこの体たらくに加え、真っ先に逃げ出したにも拘らずあの尊大な態度に国連軍やフリーランス部隊は勿論、身内である協会部隊からも冷たい視線が浴びせられる。
そこへ
「随分と士気が旺盛なのだな」
彼らの視線以上に冷たい声を発してウェイバーが姿を現す。
「!ロード・エルメロイU世・・・」
ぎょっとして全員が直立不動になる。
「それだけの威勢があるのなら是非ともパリに向ってもらおうか。あちらでは『六王権』の側近が姿を現し英霊達もいささか苦戦していると聞く。貴殿達の実力遺憾なく発揮出来るはずだ。直ぐに輸送機を手配してもらおう」
その言葉に一斉に青褪める。
「い、いや、我々には・・・」
「ま、まだロンドンの防衛が残っていますゆえ・・・」
「そ、そうです!残念ですが・・・」
そう言って先ほどまでの威勢の良さは何処へやら、こそこそと逃げる様にその場を後にしてしまった。
その情けない姿を尻目にウェイバーは先ほどの非礼を変わって謝罪しながら憤懣やるかたない思いを抑えきれずにいた。
奴らは判っているのだろうか。
今、協会は創立以来極めて危うい立場にいる事を。
ただでさえ協会はこの戦争できわめて重要なものを根こそぎ失った。
信頼と言うものを。
開戦前は目先の欲に釣られ『六王権』探索の手を抜き、結果的にはこの大戦争を此処まで拡大させた遠因となった。
戦争中もそうだ。
上層部は安全な場所を求めてスコットランド、アメリカ、アイスランド、そして再びスコットランドと拠点の場所を目まぐるしく変えていき、その醜態が更に協会の名に傷を付けた。
前線部隊は最重要拠点ロンドンから一歩も退く事無くを四度の『六王権』軍の猛攻から守りきり、結果としてロンドン防衛によりその後の反攻作戦の礎となったその勇戦には、惜しみない賞賛が送られたのに上の醜態が台無しにしてしまった。
だと言うのに上・・・正確には世間知らずの家などはそんな事態に気付きもせず眼の届かない場所では先程の様な傲慢な態度を取る事も報告されている。
それがもはやゼロの信用をマイナスにまで落とし込むと言うのに。
今は『六王権』軍の脅威が残っている以上表に出てきていないだけで、戦後これは確実に協会の立場を更に苦しいものに追い遣るだろう。
(最悪首の総挿げ替えが起こるだろうな)
現実にありえる未来を予想しウェイバーは内心で深く重い溜息を吐くしかなかった。
六十『散華』
イギリス海峡・・・
スミレの放った竜巻は意思を持ちメドゥーサ、ランスロットに襲い掛かる。
「くっ!!」
「ちっ!」
咄嗟に二人共回避するが竜巻は方向を変え、速度を上げて二人を追尾する。
「しつこいですね!」
メドゥーサはどうにか振り切ったが
「まずい!」
ランスロットは振り切れずヘリの後方が竜巻に巻き込まれる。
同時に巻き込まれたテールローター及びローターの一部が紙くずのように切り刻まれ海に落下していく。
しかも間が悪い事に弾薬庫まで被害が及んだらしく機関砲の弾丸やロケット弾も粉々になって海に落ちていく。
もはやヘリの戦力としての意味はほとんど無くなりおまけにテールローターを失った事でヘリは制御が不可能となり『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』でも制御できなくなっていた。
いやそれ以前にこのままだとヘリは竜巻に完全に呑み込まれる。
とそこへ、
「ランスロットさん!こちらに!」
見ればギルガメッシュが『ヴィマーナ』をヘリと並走させてこちらに呼びかけている。
ヘリの速度が落ちたのかそれとも『ヴィマーナ』の速度を上げたのかは不明だが確かにこのままではヘリ諸共墜落しかない。
すぐさまドアを蹴り飛ばし降りる直前に僅かに残ったロケット弾を手にすると『ヴィマーナ』に飛び移る。
同時に竜巻はヘリを完全に飲み込み粉々に砕き尽くしてしまった。
「ふう・・・間一髪だったか・・・礼を言うぞ英雄王」
「いえ、大人の僕が散々迷惑をかけてきたほんのお詫びですから」
その言葉は紛れもない本心なのだろうが、それがどうしても胡散臭く思えてしまうのは、くどいようだが成長したギルガメッシュの悪徳故だろう。
そうこう言っている内にヘリを鉄屑に変えた竜巻が今度は『ヴィマーナ』に標的を定め、接近を試みる。
見ればメドゥーサを追いかけていた竜巻もメドゥーサを諦め『ヴィマーナ』を追跡している。
「うわわわ、こっちに来た!」
慌てて『ヴィマーナ』の速度を上げようと試みるギルガメッシュだったが思うように速度は上がらない。
「魔力が不足しているのか?」
「はい、大人の僕が後先考えずに『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を展開させた所為です。大人の僕だったら何の問題もありませんが、今の僕だと不足気味で・・・時間があれば回復するんですが」
「なるほどな、では私が変わろう。まだ『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』は展開している。これも操作出来る筈だ」
「うーん、正直これをランスロットさんが操作しているのを大人の僕が見たらとんでもない事になりそうな気もしますが背に腹は帰られません。判りました。お願いします」
そう言って今まで自分が座っていた玉座から立ち上がりそこにランスロットが座る。
その途端、『ヴィマーナ』をランスロットの魔力が絡みつくように侵食、『ヴィマーナ』を完全に支配した。
同時に『ヴィマーナ』はランスロットの魔力を受けて速度を上げて竜巻との距離を離していく。
「これは置き土産だ。受け取っておけ」
そう言って後方にロケット弾を二発後方目掛け無造作に投げつける。
更に続けるように脱出の再に持ち出したであろうヘリの計器の残骸をやはり無造作に投げ付けた。
ランスロットの魔力を帯びたそれらはただ投げ付けただけにも拘らず銃弾並みの速度で竜巻に接近、ロケット弾は後方から更に高速で飛来してきた、残骸に貫かれ、爆発を起こし、竜巻はその爆風に四散する。
ランスロットの魔力を帯びたその爆風は竜巻を四散させるのに十分な威力だった。
仮に四散できなかったとしても更なる距離を稼ぐには十分な足止めだっただろう。
更に速度を上げた『ヴィマーナ』は転進し、スミレの元へ向う。
「英雄王、どうだ?」
「はい、それなりに回復しました。ただ、『ヴィマーナ』の操作には不安が残りますのでもう暫くはランスロットさんにお願いしても構いませんか?」
「それは構わんが・・・ぬ!」
そこでランスロットの眼光が鋭くなる。
その視線の先ではメドゥーサがいた。
生き物のように意思を持ったかのような水柱に間断なく襲われ戦闘中の。
「英雄王、攻撃を援護を頼む」
「はい」
その言葉と同時に『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を展開、射出された剣や槍が水柱を貫き、破壊しながらスミレに肉薄する。
しかし、それも気流の壁に阻まれ当る事はない。
だが、その隙にメドゥーサも一旦距離を取りランスロット達と合流した。
「感謝します。ランスロットそれに・・・ギルガメッシュ」
「それよりもどうしますか?彼女に遠距離攻撃は通用しませんよ」
「そのようだが、そうと言って接近戦に持ち込む事は難しいな。私に剣があれば戦えるが『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』を展開している以上『無毀なる湖光(アロンダイト)』は解放出来ないが」
「ああ、それなら僕の蔵にもありますよ。原典ですから使い勝手が違うかも知れませんが」
そう言って『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』から『無毀なる湖光(アロンダイト)』を取り出しランスロットに手渡す。
「さすがは英雄王と言った所かこれまで持っているとは」
ランスロットの手に握られた『無毀なる湖光(アロンダイト)』はランスロットの魔力を受けて支配下に収まる。
それを確認してから二、三度上下に素振りをする。
「ああ問題ない。何の遜色なく使えるな」
一つ頷く。
「そうですかそれは良かったです」
ランスロットの言葉を聞いて満足そうに屈託なく笑うギルガメッシュ。
そこに再び水柱が吹き上がり全員を海に沈めようと上空から急降下してくる。
それをランスロットはただの一刀で両断にしてしまった。
両断された隙間からメドゥーサ、ランスロット、ギルガメッシュが飛び出しスミレに接近しようとする。
「むだだよぉ〜」
同時にスミレが気流の壁で防ごうとするが、それを次々と投じられたロケット弾が風穴を開けていく。
そしてその風穴を掻い潜ってランスロットが猛スピードでスミレに肉薄しようとしたがそれを見透かしたように竜巻が発生、『ヴィマーナ』諸共ランスロットを飲み込んでしまった。
先程のヘリと違い直ぐに分解される事はないが鋭利な刃のように研ぎ澄まされた風の猛攻に軋み始める。
この分ではヘリと同じ運命を辿るのも時間の問題だろう。
「やはりか・・・・ならば」
そういうやランスロットは機首を下に向けるや海に目掛けて急降下、海中に没してしまった。
「あれ〜沈んじゃった〜それにぃ〜他のはぁ〜」
そのときようやくスミレは気付いた。
いつの間にかメドゥーサ、ギルガメッシュの姿が消えていた事に。
だが、スミレには二人を探す暇は無かった。
相手の方が与える筈がなかったのだから。
スミレの真下の海面が不自然なほど盛り上がる。
そこから時間を置く事無く海水を吹き飛ばす勢いと速度で飛び出してきた『ヴィマーナ』の機首はスミレの腹部に命中しそのままの勢いで上空高く吹き飛ばされる。
「はぐっ!!」
間の伸びた声を出す余裕も無く息を吐き出しながら軽く咳き込むスミレ。
そして吹き飛ばされたスミレと、ほぼ同じ高度に鎮座するのはメドゥーサ。
「ほぼ計算どおりですね。では行きます・・・『騎英の手綱(ベルレフォーン)』!!」
白き流星がスミレをはね飛ばす。
「ぐはっ!!」
そして・・・スミレがはね飛ばされた先には・・・
「来ましたね・・・薬の効果が切れかけているな・・・もう少しで元に戻っちゃうな・・・あ〜あ嫌だな〜」
背中には『太陽に挑む勇者の翼(イカロスの翼)』を装着し、その手には彼が最も信頼する宝具乖離剣『エア』と唯一の友の名を取った『天の鎖(エンキドゥ)』。
「愚痴ってもしょうがないか・・・ここで勝負をつけないと・・・頭に血が上った大人の僕に戻ったら間違いなく負けるし」
そう言ってまずは『天の鎖(エンキドゥ)』を開放する。
鎖は意思を持つかのようにスミレの両手両足を拘束する。
「!!」
スミレも防御したかったが『ヴィマーナ』、『騎英の手綱(ベルレフォーン)』二つの高速突撃でかなりのダメージを被りその為に集中出来ない。
そうしている内にスミレの至近にまでギルガメッシュが接近する。
「本当ごめんなさい。恨んでも良いですよ」
そう言うやその手に握り締めた『エア』が回転を速め、魔力が吹き上がる。
やはりその肉体に溜められる魔力が少ない為に、その勢いは大人の状態に比べれば劣っているが、至近距離の死徒一体を完膚無きまで消滅させるには事足りる。
「行きますよ『天地乖離す(エヌマ)・・・開闢の星(エリシュ)!!』」
真名と共に『エア』を突撃槍(ランス)の要領で両手で握り締めてスミレ目掛けて突き込んだ。
至近距離でのその一撃は瞬く間にスミレの肉体を引き裂きすり潰し、最後には塵にまで戻し、消滅した。
ギルガメッシュによる最後の一撃、それをスミレは死ぬ事への恐怖も自分を殺す相手への怒りもなくただ茫洋と眺めていた。
そんな彼女がようやく思考らしい思考をしたのは消滅する寸前の事だった。
(死ぬんだぁ〜)
あまりにもあっさりとした思考だったがそれも当然だった。
彼女には生の実感も無ければ死徒になって超越種となった優越感も存在はしていなかった。
人であった頃から惰性のまま生きてきた。
そんな彼女が今日まで死ななかったのは彼女を倒せる存在がいなかった。
ただそれだけに過ぎない。
顔を見れば殺し合いをするような相手も見つかったがそれでも死ぬ事はない。
流水を克服した特異体質と死徒でありながら空想具現化を実現させえた超抜能力故に。
彼女が眷属を作らなかったのもその為だ。
惰性のまま生きてきたが生への執着だけは人並みにあったらしく、必要な時には食物を口にし身体の構成に必要な最低限の血も摂取してきた。
そんな彼女だったが、転機が訪れたのは『蒼黒戦争』開戦寸前、彼女はそこで友を得た。
向こうは友と思っていないだろうが彼女は友だと思っていた。
自分と同じ水を克服し尚且つ水を支配する女王、『六王権』側近衆『六師』の一人であるメリッサこと『水師』。
以前スミレは一度だけ聞いてみた事がある。
何でそんなにいつも楽しそうなのかと。
それに『水師』は輝く笑顔でこう答えた
『仲間がいるから』と。
『陛下もいらっしゃる。『影』様もいる。『六師』の皆もいる。何よりも愛する夫がいる。だから私は笑う事が出来る』
とそこまで言ってからこう付け加えた。
『勿論そこには貴方も含まれているわスミレ』
この時、発せられた『水師』の言葉は真実だった。
『六師』と直属にされた二十七祖との関係はそれぞればらばらだった。
比較的友好的な関係を築く者、完全な主従関係を作り上げた物、面従腹背を続けそれを知りながら無視した者と様々だが、その中でも『水師』とスミレの関係は最も良好な関係だった。
だから出来れば人間を滅ぼした後死徒も滅ぼす時にもスミレは生かしたいなと本心でそう思っていた。
それは無理だろうなと思いながらもそう願わずにはいられなかった。
しかしその願いも虚しく水魔とまで呼ばれた死徒スミレは消滅する。
最後にこう思いながら
(メリッサ様・・・また会ったら・・・会えたら仲間と・・・友と・・・呼んで下さいねぇ・・・)
肉片一つ残す事無く消滅し、更に今まで自分達の直ぐ真下まで隆起していた海面が急速に沈下していくのを見てようやくランスロット達はスミレが完全に滅びた事を実感した。
「ふう・・・かなりの難敵でしたね」
大きく息を吐きながらメドゥーサがしみじみと実感を述べる。
スミレを『騎英の手綱(ベルレフォーン)』ではね飛ばしてから海軍死徒をランスロットと共に掃討してたのその疲れもあった。
「全くだな」
それにランスロットが同調する。
そこにやけに慌てた調子でギルガメッシュが急降下してきた。
「ランスロットさん!申し訳ありませんが直ぐに『ヴィマーナ』の操縦変わってもらえませんか!」
「??どうかしたのか」
「そろそろ薬の効果が切れそうなんです!!もう直ぐ大人の僕に戻っちゃうんですよ!」
それはすなわち暴君ギルガメッシュが復活すると言う事。
「そうかそうなると」
「確実に大人の僕はランスロットさんに攻撃します。これ大人の僕のお気に入りですから」
「事情を話して・・・も無駄でしょうね。彼には」
「はい、ですからランスロットさんにはこれを付けていて下さい。こっちの方はまだましですから」
そう言って今まで自分が身につけていた『太陽に挑む勇者の翼(イカロスの翼)』をランスロットに手渡す。
「判ったありがたく借り受ける」
そう言って翼を装着する。
同時に『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』の能力で『太陽に挑む勇者の翼(イカロスの翼)』はランスロットの支配下に収まる。
その時ギルガメッシュの表情が更に苦悶に染まる。
「き、切れる・・・薬の効き目が切れちゃう・・・」
その言葉に慌ててランスロットは飛翔し、ギルガメッシュは玉座に座る。
ランスロットが離れた事で『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』の効果は消えて『ヴィマーナ』はギルガメッシュの支配下に戻る。
再び間の抜けた音と煙と共にギルガメッシュの姿が大人に戻ったのはその直後だった。
まさしくぎりぎりのタイミングだった。
「ん??おい、狂犬、蛇!我を愚弄し尽くした下郎は何処にいる!!」
元に戻って開口一番いつもの口調でそんな事を言うギルガメッシュにメドゥーサとランスロットは顔を見合わせる。
「敵ならもう倒しましたよ他ならぬ貴方自身の手で」
「なに?そうか!下郎が王である我を愚弄した罰を与えたのか!!」
そう言って満足そうに笑う。
「さて、では英雄王。少々時間を食ったが錬剣の守護者の元へ向うか」
「ええい!狂犬、我に命令をするでない!だが、向わなければならぬか、くそっ!何処までも忌々しい偽者(フェイカー)が!!」
吐き捨てるようにここにいない相手へ罵声を飛ばすギルガメッシュだったが彼が鎮座する『ヴィマーナ』はパリに方向を定め飛行を開始している。
「色々言っていたわりには素直に従いましたね」
「気まぐれだろう。『たまには愚民どもの遊びに付き合うか』と言っていたからな。王である以上やると言った以上完遂させねば王の沽券に関わると思っているのだろう」
「あの傲慢さは死んでも治らないのでしょうか」
「生まれ変わっても変わる事は無いだろう。少年期の彼が現れるたびに自身に落胆し愚痴るのも仕方ない。あの姿になる事は決定事項だからな」
そう言いながらランスロット達も一路パリを目指し飛行を開始する。
『イギリス海峡開戦』の幕は閉じ、『六王権』軍は空軍に続き海軍もまたほぼ全滅、スミレの死亡で『六王権』『影』『六師』以外の幹部たる二十七祖は全滅した。
『蒼黒戦争』は、また一歩終戦に近付いた。
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